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工作機械の省エネ補助金|提案すべき案件の見極めと営業の進め方

執筆・編集:株式会社プリュム

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機械商社・メーカーの営業担当者へ|制度確認日:2026年10月27日

「この工作機械に使える補助金はありませんか」。そう聞かれたとき、省エネ補助金は有力な候補です。ただ、補助率だけで比べると、ほかの制度の方が有利な場合もあります。営業担当者が先に見極めたいのは、お客様の設備投資に、今どの制度を合わせられるかです。

農林水産省で補助金の制度設計・審査を経験し、現在は申請支援を行う筆者が解説します。

総代理店や上位の商社から届いた省エネ補助金の情報を、訪問のきっかけにすることもあるでしょう。その情報を商談につなげるには、お客様が関心を持った理由と、ほかの補助金の利用状況を聞くことから始めます。

この記事では、工作機械の更新を提案する営業担当者向けに、制度を比べる順序、初回の聞き取り、指定計算・独自計算の選び方を紹介します。主に扱うのは、令和7年度補正予算「省エネ・非化石転換補助金」の設備単位型です。

補助金営業の全体像。チラシから三者面談へ進み、一般型、カタログ注文型、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、都道府県の補助金、省エネ補助金の順に適合を検討。顧客の条件に合う制度を選んで申請する。
図1 チラシから三者面談、補助金選定、申請までの流れ

1.省エネ補助金を提案したい4つの場面

当社が営業相談で省エネ補助金を検討するのは、主に次のような場面です。「何か補助金がないか」という相談でも、背景によって案内の順序は変わります。

表1 省エネ補助金が候補になる場面

お客様の状況省エネ補助金を検討する理由先に確かめること
今の時期に使える制度が限られる設備更新を進める候補になる公募時期と希望納期が合うか
賃上げ要件に対応しにくい別の要件で検討できる制度を探す省エネ効果などの条件を満たすか
ほかの補助金を利用中・利用済み申請制限を踏まえて候補を広げる制度名、交付決定日、入金状況
大企業・みなし大企業である中小企業向け以外の制度を探す企業区分と追加の申請条件

大企業も対象になり得ますが、企業区分に応じた追加条件があります。「大企業なら必ず使える」「大企業には省エネ補助金しかない」とは言い切れません。また、ほかの補助金を一度使っただけで、別制度への申請がすべてできなくなるわけでもありません。[S1]

省エネの政策的な意義を長く説明するよりも、「予定している設備更新の負担をどう軽くするか」を起点に話す方が、お客様の関心に結び付きやすいと考えています。

2.最初に聞くのは、関心を持った理由と補助金の利用状況

最初の質問は、「省エネ補助金に関心を持たれたのは、どのような理由からですか」です。電気代の削減が目的なのか、設備更新に使える制度を探しているのか。それとも、ほかの補助金に申請できない事情があるのかを確認します。

表2 初回訪問で聞く4項目

聞くこと聞き方の例判断につながる点
関心を持った理由電気代と設備更新、どちらが主な目的ですか省エネを優先する理由
補助金の利用状況申請中や、交付決定後まだ未入金のものはありますか申請制限・重複経費
設備と希望納期何を何台入れ替え、いつ稼働させたいですか対象設備・更新範囲・日程
企業規模と賃上げへの対応従業員数と資本関係、賃上げ計画を確認できますか対象者区分・制度との適合

補助金の利用状況は、制度名に加えて「申請中・採択済み・交付決定済み・事業実施中・入金済み」のどこまで進んでいるかを聞きます。採択と交付決定、設備の設置完了と補助金の入金は、それぞれ別の段階です。

例えば、省力化投資補助金・一般型の第8回公募要領では、同事業の申請中や、交付決定後に支払いが完了していない場合などに制限があります。旧ものづくり補助金など所定の制度についても、交付決定後の未入金や、過去3年間の交付決定回数に条件があります。単に「補助金を利用済み」と記録するだけでは判断できません。[S2]

一方、一般型とカタログ注文型は、対象経費が異なれば併用できる場合があると公式FAQに示されています。利用歴だけで候補から外さず、申請する時点の公募要領と対象経費を照合します。[S4]

3.補助金は、お客様の条件に合う順に比較する

当社では、中小企業の工作機械投資で省力化の効果を説明できる場合、まず省力化投資補助金・一般型への適合を確認します。補助額だけでなく、設備構成や工程の変化を計画に組み込めるかを見るためです。

一般型が合わなければ、登録製品を使うカタログ注文型、更新による省エネ効果を示す省エネ補助金などを比較します。新製品開発や新市場への進出が目的なら、対応する制度も候補になります。次の表は、当社が提案を組み立てる際の目安です。

表3 工作機械の営業で使う制度比較

候補先に検討しやすい条件営業が確認する点
省力化投資補助金・一般型人手不足や工程改善につながる設備投資省力化の効果、賃上げ、利用歴
省力化投資補助金・カタログ注文型希望の製品が登録され、用途も合う型式・仕様・付属品の対象範囲
省エネ補助金・設備単位型既存設備の更新で省エネ効果を示せる対象機種、計算結果、更新範囲
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金新製品開発や新市場進出などが事業目的該当する枠の事業要件
都道府県・市区町村の補助金所在地や投資内容に合う募集がある対象地域、上限、完了期限

一般型は通常、補助率1/2、小規模企業・小規模事業者等は2/3、通常の補助上限は従業員数に応じて750万~8,000万円です。カタログ注文型は2026年3月19日の改定後、通常の上限が500万~1,000万円、補助率は1/2以内です。いずれも特例や個別条件があります。[S3][S5]

省エネ補助金の従来枠では、工作機械の設備費に対して補助率1/3以内、上限1億円が基本です。対象のGX設備を使うメーカー強化枠では上限3億円ですが、製品・メーカーの登録条件を確認する必要があります。補助率が低くても、投資額や利用できる制度の組み合わせ次第では有力になります。[S1]

カタログ注文型では、希望する型式・仕様が登録範囲に入るかが先です。付属品も含めて見積額の全額が対象になるとは限りません。自治体の制度も、募集時期、対象地域、上限、完了期限を個別に見ます。「自治体はすべて半年以内」「省エネなら必ず2年使える」といった一律の案内は避けましょう。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、新製品・サービスの開発など事業目的に合う場合に検討します。例えば革新的新製品・サービス枠は、機械を入れるだけの計画を対象としていません。設備の値引きに近い感覚で紹介する前に、お客様が取り組みたい事業を確かめます。[S6]

4.公式チラシを入口にして、三者面談へつなぐ

補助金に詳しくない営業担当者でも、最初からすべての制度を説明する必要はありません。対象となりそうな制度の公式チラシを持参し、補助率・上限・対象設備・スケジュールを示しながら、まず関心と条件を聞きます。

例えば、次のように切り出せます。

「今回の設備更新には、省エネ補助金が候補になります。ほかの制度も比べたいので、今申請している補助金や、採択後まだ入金されていないものはありますか。希望納期も伺って、使える制度を絞りましょう。」

初回訪問では、次に確認すべき条件をそろえます。チラシで答えられる範囲を説明し、対象経費や申請制限、省エネ計算に踏み込む質問は、お客様・営業担当者・コンサルタントの三者面談につなぎます。

「補助額だけでなく、発注できる時期、計画づくりの負担、省エネ効果の見込みまで比較します。設備の仕様は私から、制度の詳しい条件は専門家からご説明します。」

募集があるからといって、希望納期に間に合うとは限りません。応募締切、交付決定、発注、納入、実績報告、入金までを一緒に確認します。納期と補助金の待ち時間の整理は、関連記事「工作機械の補助金営業」でも紹介しています。[関連記事]

5.省エネ補助金を選んだら、指定計算と独自計算を比較する

工作機械の設備単位型では、対象機種や更新内容を確認したうえで、省エネ効果を試算します。指定計算は、SIIの計算方法に沿ってポータルで算出する方法です。独自計算は、実測データなどの根拠を使い、実際の設備や加工条件に即して算出する方法です。[S7]

表4 指定計算と独自計算を選ぶ視点

観点指定計算独自計算
計算の方法SII指定の方法でポータルから算出実測値・合理的な推計から算出
主な準備製品情報証明書、既存設備情報、稼働状況等新旧設備の根拠データ、計算式、説明書
選ぶ視点指定の前提で更新効果を適切に示せるか実際の加工・工程集約の効果を根拠付きで示せるか
留意点簡便でも採択が保証されるわけではない根拠収集の手間が増え、必ず有利とは限らない

まずは指定計算の試算で、どの程度の省エネ効果を示せるかを把握します。結果が実際の更新効果と合わない場合は、独自計算の根拠を用意できるか検討します。古い設備だから必ず有利とは限らず、「30年前の機械なら通る」といった年数だけの判断はできません。

当社でも、指定計算の試算結果と公表された採択事業の省エネ効果を見比べ、計算方法の検討が必要だと感じた経験があります。ただし、独自計算にすれば採択されるという意味ではありません。実態を適切に示せるかと、その根拠をそろえる負担の両方を見ます。

申請要件と、採択事業の平均値を分けて見る

従来枠の生産設備では、省エネ率10%以上、省エネ量1kl以上、経費当たり省エネ量1kl/千万円以上のいずれかを満たすことが省エネ要件です。省エネ率だけが入口ではなく、ほかの要件や審査もあります。[S1]

SIIが公表した令和7年度補正・2次公募の工作機械区分では、申請285件に対して採択274件、採択率96.1%。採択事業の平均省エネ率は44.1%、平均省エネ量は4.8kl、平均経費当たり省エネ量は0.8kl/千万円でした。[S8]

これらの平均値は合否の境界ではありません。下回ったから不採択、上回ったから採択とは判断できず、過去の採択率も目の前の案件の採択確率ではありません。なお、この設備区分別集計にはエネルギー需要最適化型との組み合わせを含み、複数区分を導入した申請は区分ごとに数えられています。

独自計算で確認するのは、電力と稼働の実態

独自計算では、既存設備と導入予定設備について、加工時・非加工時の消費電力、加工時間、稼働日数、生産量などの根拠をそろえます。例えば、消費電力(kW)と時間(h)から使用電力量(kWh)を積み上げる考え方です。メーカーの仕様書やシミュレーション、現場の測定記録・稼働日報などを組み合わせます。[S7]

比較条件をそろえ、単に生産量を減らした分を省エネ効果にしないことが大切です。加工速度の向上や工程集約によって同じ生産量を短時間で加工できる場合は、その理由と数値を説明します。測定方法や必要なデータは、先にコンサルタントとメーカーで決めておくと、現場への依頼が明確になります。

6.営業担当者は、判断材料をそろえて専門家につなぐ

営業担当者に求められるのは、複雑な省エネ計算を一人で仕上げることではありません。お客様が導入したい機械と導入時期をつかみ、制度を選ぶための情報を集め、メーカー・コンサルタントと話ができる状態にすることです。

表5 三者面談までに整理したい情報

情報営業担当者が集めるもの次の確認
事業者・制度利用歴会社概要、従業員数、補助金名と進捗対象者・申請制限
設備更新の内容新旧のメーカー・型式・台数、見積、仕様対象設備・経費・更新範囲
希望する日程発注・納入・稼働の希望時期公募と事業期間との整合
稼働の実態加工内容、稼働時間、日報等の有無計算方法と追加データ

資料がすべてそろう前でも、分かる範囲を共有すれば、次に何を確認するか相談できます。省エネ補助金を進めるのか、別制度を待つのか、補助金を使わず希望納期を優先するのか。お客様の設備投資が前に進むよう、補助額・条件・時期を並べて判断しましょう。

工作機械の補助金提案を相談する

プリュムでは、機械商社・メーカーの営業担当者から、補助金の候補選定、申請条件の確認、指定計算・独自計算の検討などの相談を受け付けています。「省エネ補助金を案内してよい案件か」という段階から、セカンドオピニオンとしてもご相談ください。

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本記事は2026年10月27日時点の公式資料と当社の実務経験に基づきます。補助対象、申請制限、募集日程等は年度・公募回によって変わります。個別案件は最新の公募要領・事務局案内を確認してください。補助金の採択・交付を保証するものではありません。

出典・参考資料

[S1] SII|令和7年度補正 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)4次公募要領(対象事業者・従来枠・メーカー強化枠)

[S2] 中小機構|省力化投資補助金・一般型 第8回公募要領(補助対象外となる事業者)

[S3] 中小機構|省力化投資補助金・一般型

[S4] 中小機構|省力化投資補助金・カタログ注文型 FAQ

[S5] 中小機構|省力化投資補助金・カタログ注文型(2026年3月19日改定後)

[S6] 中小機構|新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 概要

[S7] SII|省エネルギー計算の手引き・生産設備(4次公募、指定計算・独自計算)

[S8] SII|令和7年度補正 設備単位型 新規採択事業の結果[2次公募]

[S9] SII|設備単位型 4次公募情報・公式パンフレット

[S10] 幻冬舎ルネッサンス|『補助金から学ぶ経営者マインド』書籍紹介

この記事を書いた人

著書『補助金から学ぶ経営者マインド』と写る、株式会社プリュム代表取締役の藤井孝介

藤井 孝介

株式会社プリュム
代表取締役

著書に『補助金から学ぶ経営者マインド』(幻冬舎、2023年)。

農林水産省で5年間、補助金の制度設計・審査・採択後の申請者フォロー、公共事業の公募・入札等に従事。その後、会計事務所の役員として約2年間、補助金事業や経営に携わる。2023年に退職し、株式会社プリュムを創業。エネルギー診断プロフェッショナルを取得。

著書の紹介 / 支援事例